小見山峻 インタビュー

小見山峻 インタビュー

テンションが上がるもの

カメラを始めたのは22,3歳の頃。もともと散歩とか出かけたりするのがすごい好きだったんですね。こんなに歩き回っているんだったら、カメラがあればもっとこの散歩が充実するかなと思い、型落ちの安いカメラを買ったのが最初。
大学を卒業してもやりたいことが全然見つからなくて、これからの人生どうなるのかなって思っていた時期に写真と出会って、はまっていきました。
今の時代、写真を撮ったことない人ってほぼほぼいないじゃないですか。その中で写真を撮っていくことで、自分にもできそうだなって思ってほしいんです。僕自身が写真にすごく救われたので、僕の写真をきっかけに、自分も始めてみようかなって思ったり。もちろん写真じゃなくても、何かをやってみようっていうきっかけになれたらいいなって思っています。僕は、撮れそうだけど撮れない写真を撮り続けていきたいですね。

現行品のフィルムカメラはほとんどないし、フィルムの銘柄もどんどん生産中止になっていき、これからは収縮していく一方。情報媒体としても、映像に置き換わっているじゃないですか。自分がその世界で生きているのに、その文化がすり減る一方なのはすごい悔しいんです。だからこそ写真の楽しさを知ってもらいたいという気持ちがあって。 写真が生まれる前は、絵や文章が情報媒体であったのが、写真が世に出てきて、情報としての絵の機能が完全に淘汰されて。そこから抽象画が生まれたりして、絵が新しい段階に進んでいったように。今では写真が情報媒体として淘汰されているということは、ここからアートとして、生活を彩るものとして発展していくターニングポイントにいるなあと感じていて。だからこそ、こんなに楽しいものがあるんだよって言うことを伝えていきたいですね。



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結構メンクイです

今回、何をセレクトしようかなって考えているときに、家具や洋服など身の回りにあるものが、一点ものが多くて既製品があまりなかったんです。その中でも実際に使って気に入っているものをセレクトしました。
一点ものって探すのが楽しいんですよね。家具や洋服などは、映画を見ていてこういうのいいなって思うことが多くて。僕の場合は、それがちょっと古い映画だったりするので、実際に買うものも古着やアンティークな家具なんかになってしまうんですけどね。
値段が高くていいものってたくさんあるじゃないですか。もちろん値段のわりに質が悪いものもありますが。高いお金を出したら、そりゃいいもの買えるよなってものがあって。でも、そんな中で、高くはないのに自分にとってドンピシャのものを探す方が楽しいんです。

機能性はあまり気にしていなくて、結構メンクイです(笑)。例えば、セレクトしているアルネヤコブセンの温度計や湿度計は実際見づらいんです。でも、テンションが上がるものが家の中にあった方がいいなって。クラリンチェアもそう。クッションが付いているタイプもあるのですが、パイプ椅子感のある無骨さが好きで。寒い季節だと座るときにめっちゃお尻が冷たくて(笑)、クッション付きのタイプの方を選べばよかったなって思うこともあるのですが。でも、この見た目が好きだから。
フィルムでずっと写真を撮っているということもあってか、その工程や過程が不便なことにあんまり抵抗感がないんです。一癖あるけど、それを差し引いてもかわいいと思えるものが好きですね。



konicaの現場監督と、吉田穂高さんの版画

ここ数年で買ってよかったダントツ一位は、konicaの現場監督というフィルムカメラ。自分的に使い勝手がベストなカメラで。現行品ではないので、ヤフオクなどで購入するしかないのですが、17台くらい持っています。工事現場の記録用のカメラで、防塵防滴ですごいタフなんですよ。めちゃめちゃフォーカスが早くて、ストロボも明るくて強い。夜にこのカメラで撮影すると、コントラストの強い写真を撮ることができて。レンズは28mmで、自分の画角的にちょうどいい。多分このカメラ一生使うんだろうなって思い、いつ壊れてもいいように一生分買っておこうって集めています。
それと、吉田穂高さんの版画。もともと、浮世絵と版画がすごい好きで、吉田穂高さんのお父さんの吉田博さんという版画家の方は知っていたんです。何年か前に、熱海に旅行して泊まったホテルに吉田穂高さんの漫画が飾られていて、それがもうめちゃめちゃかっこよくて頭から離れなくなっちゃって。ホテルの方と話して売ってもらったんです。 それまで、あまりアート作品を買うということをしてこなかったんです。でも、その版画を買ったことで、こういう風に作品を買いたいという気持ちになるんだっていうのが、ようやく自分の中で分かってきて、それは自分の中ですごい大きかったですね。



好きなもので埋め尽くされたい

ミニマリストとは思想が真逆なのですが、自分の好きなものに囲まれて生きてたいというのがあって。例えば、部屋をミッドセンチュリー風にしようとか、ちょっと北欧モダンぽくコーディネートしようとか。そういう考え方もすごくいいと思うのですが、実は勝手に、自ずとまとまるもんなんだと思うんですよね。本当に自分の好きなものだけを集めていけば、それは自分が好きなものという軸に沿った集まりになるから。自然とまとまっていくというか。だからピンときたものは買ってしまいますね。
僕にとってのいいものとは、値段とか品質は問わず、これがあったら楽しいだろうなというもの。吉田穂高さんの版画も、毎日眺めるわけではないのですが、ふと見たときにテンションが上がる。自分的にそれがあって楽しいかどうかですね。

人によるキュレーションというHATCHのコンセプトは、すごい真っ当だなって思います。今の購買意欲の生まれ方って、インフルエンサーが使っているものやYouTubeで紹介しているものを見たのがきっかけということが多いと思うんです。HATCHのようなサービスがあるのは自然の流れ。しかも、HATCHの場合はそれぞれのインフルエンサーという点が集まって線になっているじゃないですか。ある人がセレクトしている商品を目当てにサイトに訪れたら、違うセレクターの商品も買ってしまったり。それが素敵だなって思います。 自分は、インフルエンサーみたいにSNSでこれ買ってよかったよって発信する立場でもないし、SNSは写真に特化したいと思っていて。自分がこれ本当にいいなあと思うものがあっても、今までは言うところがなかったので、今回お声がけいただいてすごい嬉しかったです。
自分のテンションを上げてくれるようなものをセレクトしたので、自分の好きなものが他の人の好きにもなったら嬉しいですね。



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