Kan Sano インタビュー

Kan Sano インタビュー

作り手の熱量を感じられるもの


ーものを選ぶ基準や、ものへのこだわりについて教えてください

同じものを使い続けるタイプなので、自分のそばにずっと置いておきたくなるような手触りや使いやすさが大事です。例えば洋服は、オシャレは我慢という言葉もありますが、その感覚は僕には全くなくて。着心地の良さや機能性がないと意味ないじゃんって思うんです。
機能性だけが良くてもデザインが好きじゃないとずっとは使い続けないですね。なんか違うなってなっちゃうんです。最近だと赤いものがめちゃめちゃ好きで、赤いだけでときめきます。昔から好きだったのですが、最近は特に好きで。運転をしていて赤信号を見ても、ちょっといいなって思っちゃいます。(笑)


ーそれは昔と変わってきましたか?

物欲が強いので、雑貨や小物なんかはすぐ欲しくなります。でも、そうするとものがどんどん増えてしまう。本当はものが少ないすっきりした部屋にしたいのですが、ついついものが増えてしまうのが悩みの種で。だから、買うときによく考えるようになりましたね。これ欲しいんだけど、本当に今の生活の中で使うのか?って。でもレコードは今でもすごくたくさん買っているので、物欲が全てレコードにいっているのかもしれません。


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ーものの情報源はどこからですか?

友人が使っているものや、おすすめしてくれたものはチェックします。
あとは、旅先やツアー先などでお店に入って気になったものがあると必ず写真を撮ってメモします。カフェでいい音楽が流れていたらShazamをするのですが、それに近い感覚。とりあえずメモをして、後日やっぱりあれ気になるなということがあるので、そのときに思い出せるようにしておきます。


ー最近、何か買い物をされましたか?

この、木製のスマホスタンド。旅行先のフラッと入ったカフェで見つけたんです。ものとしてすごく可愛いし、使いやすくて、いろんなサイズのスマホを立てられて、機能性に優れている。こういうものはずっと使いますね。
あとは、煮干しの入ったUSBメモリ。(笑)
ハンドメイドインジャパンフェスというハンドメイドの雑貨のお店が集まったフェスがあって、そこに出演したのですが、お店を回っていた時に見つけたんです。煮干しの脳みそにデータを保存できますよというコンセプトのアイテムで、それは買っちゃいました。





ーものの対価は気にしますか?

20代の頃はお金がなかったこともあって、安ければ安いほどいいと思っていました。
でも30代になってお金に対する考え方が変わってきて。自分の支払ったお金がどこに届くんだろうっていうことをすごく考えるようになったんです。そうすると、ちょっと値段が高いものでもそれが本当に良いものであれば、ちゃんと作り手にお金が渡って、その人がそこで収入を得て、また次のものを作っていく。その繰り返しによって、そこの文化や伝統が持続し、カルチャーが栄えていく。そういうことに少しでも自分も貢献できるのでは、という感覚があるんです。だから、いいものにはお金を払いたいって思うようになりました。


ーここ数年で一番ヒットした買い物を教えてください

難しいな、、、益子焼のぐい呑みですかね。
益子焼の陶器市に行って買ったぐい呑み。もう5年以上前に買ったものなのですが、めちゃめちゃ気に入っていて、日本酒を飲むときいつも使うんです。これからもずっと使い続けるものですね。数千円のそんなに高いものではないのですが。居酒屋に行った時とか、ツアーの打ち上げで日本酒を飲むときに、あーあれ持ってくればよかったなっていつも思いますね。マイぐい呑み、持ち歩きたいです。(笑)
形と色と質感と持ったときの手触りと大きさと、使いやすさと、全部良くて。その後も、いろんな所で他のぐい呑みを見ているのですが、今のところそれを超えるものはありません。





ー自分を構成する3つのアイテムを教えてください

キーボード。ここに置いてあるのは、2015年に買ったKORGのSV1のリバースモデルで、赤いボディに白黒反転鍵盤で、限定500台のもの。これはもう売っていなくて、KORGの本社のショールームに飾ってあったものをお願いして譲ってもらったんです。ライブでも、制作でも使っています。一生使っていきたいお気に入りの1台。

それと、レコードプレイヤー。これはTechnics SL-1200というド定番のターンテーブルなんですが、上京して最初の年に買ったのでもう16年ぐらい使っていますね。

最後はマイク。AKGのElleCというボーカルマイクです。これももう売っていなくて、何年もずっと探していたのですが、去年たまたまメルカリで見つけて買ったんです。めっちゃ気に入っています、自分のライブには欠かせないマイクなので。

やっぱり機材ばかりになっちゃいましたね。


ー断捨離はされますか?

洋服は、年末にバンドのメンバーとの忘年会でみんなに持っていってもらったりするのですが、断捨離は苦手です。ものをいかに減らしていくかってすごく難しいですよね。例えば音楽のプロデュースも、アレンジの仕事って音を足す作業かと思いきや、音を抜く作業なんです。音を足すのはすごい簡単なのですが、1回足された音を抜くのってすごい難しいんです。ものにもそういう感覚があって、1回買ってしまうと捨てられなくなってしまうので、買うときにこれは使い続けるのかどうか、慎重に考えますね。





ーどういうところから、ものによる豊かさを感じますか?

本当に大事にしているもの、好きなものが一つ手元にあるだけで気持ちや、その日のテンションは変わると思うので、そういうものを周りに置いておきたいなと思います。 例えば音楽だと、今やサブスクで聞こうと思えばボタン一つですぐ聞けてしまうじゃないでか。でも、あえてLPから盤を取り出し、ターンテーブルに置いて、針を置き、レコードを聞く作業って、一手間かかることなんですけどその一手間がもう愛しいみたいな。ものを好きになるって多分そういうことなんですよね。その、少し手間かかかるかもしれないけど、そのものと触れ合う時間がもう楽しいんです。


ーKan Sanoさんにとっていいものの価値とは何ですか?

作り手のこだわり、考え方、思想とか、そういうものが入っていると感じられるものですかね。どんなものでもそうだと思うのですが、実際に作り手や作家さんとか、野菜であれば農家さんとか、その人に直接会って話を聞いていると、みんなものすごい熱意、こだわりを持って作っていて。そういうことを知ると、やっぱりものを大事にしようと思うし、そういう作り手の熱量を感じられるものが好きですね。ずっと使いたいと思うのはそういうものです。





ーどうしてセレクターのオファーを受けていただけたのでしょうか?

以前からTakuさんのセレクトをチェックしていて、このサービス面白いなと思っていました。僕はそんなにものに詳しい人間ではないので自信はなかったのですが、ものは大好きなので、自分の使ってるものをみなさんとシェアできたら面白いかなと思い参加させていただきました。


ー人によるキュレーションというコンセプトについて、どう思われますか?

元々あるものに、ちょっと違う視点だったり、違う価値を与えるというのは面白いなと思いますね。DJに近い感覚。同じレコードでも、この人がかけることによって、新しい価値とか視点が生まれるような。あ、その音楽とここを繋げちゃうんだとか。そういう自分では気づかなかった視点や発想だったり、キュレーションって多分そういうことだと思うんですよね。それはレコードだけじゃなくていろんなものにも言えることで面白いなと思います。





ーHATCHでのアイテムセレクトのコンセプトを教えてください

僕が実際に使っていて気に入っているもので、ちゃんと使えるものを選びました。実際に自分が好んで使っているものしか選んでいないです。


ーHATCHのお客様へ一言

僕よりものに詳しい方はたくさんいらっしゃると思いますので、むしろ皆さんのおすすめを僕に教えて欲しいですね。僕の視点を通して何か新しい発見だったり、ものとの出会いを提供することができたら嬉しいです。



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