元木大輔 インタビュー

元木大輔 インタビュー

事務所にあるお気に入りのもの


ーものを選ぶ基準や、ものへのこだわりについて教えてください

僕らは、プロダクトから空間まで多岐に渡ってデザインをしていて、必要だと思えば何でも提案して作ってしまうスタンスでやっています。今まで作ったものだと、小さいものはジュエリーから、大きいものでは1,000坪くらいの公園というように振れ幅があって。基本的に買い物はほぼ全部「資料」として見ているフシがあるんです。生活にすごくこだわりがあるタイプではないのですが、見たい知りたいという好奇心がすごくあるので、コップであればいろんなコップを使ってみたいという意識の方が強いんですね。だから大体買い物は、その時に進行しているプロジェクトの考え方に合いそうなものを買ってしまうことが多いですね。
最近だと陶器かな。花瓶をデザインしていて、これは工事現場の足場で使われるクランプと、排水で使われるエルボ管なのですが、一輪挿しやペンホルダーとして使っていて、これを陶器で作ろうという話をしていて。だから、今は資料として、釉薬の気になった質感のものはとりあえず買ってみて、買っては計測したり。欠けたらこんな感じなんだとか。そんな感じで資料として買うことが多いですね。






ー元木さんの好みはどのようなものですか?

シンプルなんだけど、実験的なもの。
身につけるものは、楽なものが好きです。よく現場や、工場に行ったりするのですが、その帰りに綺麗な格好をして会食や雰囲気の堅い場所に行かなければいけないことも多いので、TPOを選ばないもの。それと、面倒くさがりなので、適当に使っていてもいい感じのもの。アイロンをかけないとシワになってしまうようものはあまり好きではないです。


ーそれは昔と変わってきましたか?

昔の方が、好みが色濃く反映されていた気がしますね。今の方がフランク。資料として見ているというのもあるので。


ーものの情報源はどこからですか?

これも資料になってしまうのですが、SNSを見ていて気になったものがあればスクショ、本を読んでいてもスクショ、街を歩いていてもパシャパシャ撮って、で整理をしないでとりあえずフォルダに入れるんです。そうすると大体1年間で2,000枚くらいの画像がたまって。気になったものはそうやってどんどんストックしていきます。気になってストックするという行為だけでなんとなく体験として刻まれるじゃないですか。それでたまたまどこかで売っているとか、エキシビジョンが開かれているとか、そういうのにタイミングが合えば見に行くようにしています。



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ー最近、何か買い物をされましたか?

昨日、マイクロガスバーナーを買いました。これも資料としてなのですが、テーブルにガスバーナーが埋め込まれていたらいいなと思い、構造を理解したくて、これが一番小さかったので購入しました。
あと、同じところでAirPods Maxも買いました。事務所にいる時にこれをしてると、見た目的に「話しかけないで」って感じになるじゃないですか(笑)。前からノイズキャンセリングのヘッドフォンが気になって調べていたので、イヤーパッドが大きくて、付け心地が良かったのと、Appleの純正で設定がすごく楽だったという理由で購入しました。


ーものの対価は気にしますか?

もの作りをしていると、対価に関してはすごく考えることが多いです。お金を介さない様な交換の仕方があるといいなあと思っていて、クリエイター同士だとそれができるんですよね。

例えば、「SHUKYU Magazine」というサッカーの雑誌があるのですが、彼らのイベントの会場のデザインを手伝ったんですよ。最初、2年くらい前にソニーパークで大規模なイベントを行う予定だったのですがコロナで中止となってしまい、緊急事態宣言が明けて再度準備をしていたのですが、ローンチした1週間後くらいにまた緊急事態宣言が出てしまったりととにかく運が悪くて。最初はイベントの予算がそれなりにあったのですが、不運が続き規模と予算を縮小せざるを得なくなってしまって。面白い雑誌だし、元々ビジネスライクな関係ではなかったので、2回目からは僕らのパートは無料でお手伝いしたんです。その代わりに、SHUKYU Magazineの広告枠を使っていいですよということで、うちの事務所の広告を大々的に入れようって、物々交換スタイルになりました。それで「サッカースタジアム設計します」という広告を出稿させてもらったんです。スタジアムの完成予想パースはアーティストのヒマさん(平山昌尚)に描いていただいて、ヒマさんとも物々交換をしようという話になって、アートワークを提供していただいた代わりに、今、彼の家の靴箱を作っているんです。

例えば、ミシュラン星つきのレストランと、めちゃうま居酒屋で、味だけで比較すると両方ともめちゃめちゃ美味しいわけじゃないですか。値段では10倍くらいの開きがあっても、明らかに10倍うまいかどうかは分からないですよね。でも、体験の質が違うわけで、違うのはコンセプトだけ。どちらの方がいいということではなく、両方楽しみたいなと思います。

ただ、安くするということを目的にしているものは、あまり良くないなって思うんです。そういうものはインフラとして国がやって欲しいくらい。みんなが使うものとか、例えば、パンツや安いTシャツなんかは、共有財産にして、国が作って、それは誰でもアクセスできて、それが嫌な人は好きなものを各自で買って、くらいの方がいいなと思っちゃいます。






ーここ数年で一番ヒットした買い物を教えてください

買いものではないのですが、この事務所かな。今は少し手狭になってきたのですが、7年くらい前に借りました。当時はまだ2人だったので、全然払える家賃ではなかったのですが。友達に声をかけて、4社でシェアをして。ここは無理をしてでも借りてよかったなって思いますね。


ー元木さんを構成する3つのアイテムを教えてください

スピーカー。とにかく音楽が好きで、一日中聞いています。そんなに音質にこだわっているわけではなくて、ザラザラの音もそれはそれで良かったりするし、クリアなハイエンドな音も良いし。音楽を出力してくれる何か、ですね。スピーカーでもヘッドフォンでも。

ペンかな。ペンもなんでもいいんですけど。そんなにものに執着がないので、最近は筆箱を持つのもやめてしまったし。行く先々でみんなに借りるんです(笑)。常にスケッチを描いているので、描けるものであればなんでもいいんですけど。

あと一つなんだろう、、眼鏡かもしれないですね。僕、眼鏡をすぐ失くしてしまうんです(笑)。失くすの前提で、たくさん持っています。ないと見えないので。






ーどういうところから、ものによる豊かさを感じますか?

最近ではモノよりコトって言われますけど、それは消費の矛先の業界が変わっただけで、実際は過ごす時間をより良くしたいってことだと思うんです。人生の全ての時間が、何かちょっと楽しかったり、いいものであってほしいなと思っていて。例えばティッシュを使うときに、ティッシュを取るシュってするその音がすごく心地がいいとか。あらゆるものから知的な好奇心みたいなものを感じられると、どんなものでもいい時間にしてくれるというか。適当に作ったものより、誰かが愛情を込めて作ったものだと、体験の質も違うし、よりいい時間を過ごすことができるので。そういうところですかね。


ーどうしてセレクターのオファーを受けていただけたのでしょうか?

今まで考えたことのないお題だったので、考えたら楽しそうだなって思って。






ー人によるキュレーションというコンセプトについて、どう思われますか?

例えば、京都でも、ミラノでも、ナイロビでも、そこに行ったら地元の人に聞きたいじゃないですか。どこにいったらいいの?って。ガイドブックを見るのではなくて、信頼できるの人のオススメは当然信頼できるし。オススメしてくれたっていう事実だけで楽しめたりするから。HATCHもそういう楽しみ方ができるから面白いサービスですよね。


ーHATCHでのアイテムセレクトのコンセプトを教えてください

最初は、基本的に買い物はほぼ全部「資料」として見ているのですが、その中で、実際に事務所で使っていて気に入っているものです。


ーHATCHのお客様へ一言

買い物を楽しんでください。



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